| 日本での、認知症ケアの印象 |
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前にも言いましたが、私は東京に18ヵ月か月住み、あちこちで認知症についてのセミナーを行ったりいろいろな施設も訪問するという、非常に有意義な時を過ごしました。日本では、主に松山、沖縄、広島、大阪、京都、長野など、どちらかというと南側の地域を訪れました。 今回はそんな中で得た日本の認知症ケアでの経験や、スウェーデンと日本の違いなどを書いてみようと思いますが、概して、スウェーデンと日本の認知症ケアは同じような方向で進んでいるとはいえ、やはりその経過やレベルなどでは違いがあると感じました。
ひとつの問題としては、例えばケア職員と医師などの距離が遠く、そのつなぎ役を看護師に頼るということで中々チームとして動くのが難しいということがあります。この傾向はスウェーデンでもありましたが、次第に、つなぎ役を通すのではなくお互いがチームとして直接話し合うという方法をとるように改善されてきました。 日本で行った教育の中で比較的容易に取り入れられるのは、ソフト・ティッシュ・マッサージ(日本ではタクティールケアとして知られているでしょう)でしょう。スウェーデンでは一般的に知られており、多くの施設でケアの良い補完的な方法として使われています。日本でも、私の知る限り、その導入はある程度成功していると思います。日本では、介護に関して看護師や介護士、ヘルパーなどいろいろな職種によって仕事も振り分けられているようですが、この手法はどんな職種の職員でも使えます。スウェーデンと比べると、日本では職員が自分の仕事に対しての見返りを得るということが少ないのではないかと思いますが、そんな意味でもケアの分野ではとても良い、有効な手段になると思います。 日本の職員は、みなさんとても前向きで、良い認知症ケアをしようという意欲に溢れていました。また、いろいろなヒントや助言を取り入れ、現場での仕事を少しでも良い方向に向けるための教育にも、非常に熱心でした。 ひとつ私が施設の見学の際に気のついたことは、職員が福祉用具を利用することがあまりにも少ないということです。職員はケアの現場で良いケアをするためにはなくてはならない存在ですから、みなさん、どうぞご自分のケアにも気をつけて頂きたいと思います。 認知症ケアの現場で仕事をする上で忘れてはならないことは、患者・利用者さんの持っている知識と機能を保持することの重要性です。失った機能は戻りませんが、機能が低下したとしても、自分が出来ることは出来るだけ自分で行うようにすることで、それらを保持していくようにすることは重要です。スウェーデンでも、例えば服のボタン掛けなど職員がした方が早く出来るために職員が掛ける、ということをした時期もあります。日本では、高齢の方は歳を取りそれを敬うということで、職員が親切心でいろいろ手伝うということがあるというような気がします。 例えば、今まで私が見たこともないような量の車イスを使用しています。これは日本の保険制度のせいで、足の力が衰えるとすぐ車イスを提供するのかどうか分かりませんが、スウェーデンでは、もし少し歩くことの機能が残っているのであれば、しっかりした靴や転んでも怪我をしないように工夫がされたズボンや腰の保護具、歩行補助器具やヘルメットなど必要なものを用意して、高齢者の歩く機能を出来るだけ使うことでその保持を考えます。日本では、外で歩行器を使用している姿はほとんど見かけませんでした。もしかしたら、福祉用具というものに対しての考えがスウェーデンとは違い、日本では福祉用具を使うのは恥ずべきことだという思いがあるのかもしれません。 もうひとつ気がついたことは、日本では公営の施設とプライベートな運営による施設に大きなギャップがあるということです。もちろんスウェーデンでもそれらの違いはありますが、その違いはそれほど大きくはありません。私が訪れた多くのプライベート運営の施設は、まるでお城のような構えでした。
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私が日本で行った教育というのは、患者の症状を解釈すること、どのように良いチームワークを形成するか、また家族への支援や認知症ケアに携わる人たちの間でのコミュニケーションや関係がいかに大事であるかという、緩和ケアに基づいたケアの考え方についてです。これは、初めて耳にすると何となく掴み辛い感じがするかもしれませんし、また頭では分かっていても現実に現場に取り入れることが中々難しいと思う人がいるかもしれません。
私の日本滞在中は、認知症ケアの分野では非常にたくさんの体験をしましたが、もちろん日本の文化に触れる機会も多くありました。日本は、優れた文化と人に恵まれた、素晴らしい国だと思います。是非、また訪れる機会があることを祈っています。