スウェーデン福祉現場に学ぶ触れるケア:利用者もスタッフも幸せになるハプティックセラピーの実践



触れ合いは、年齢や障害の有無に関わらず、人の安心感や尊厳を支えるケアの基本です。スウェーデンの福祉現場では、ハプティック(触れるケア)が特別な療法ではなく、日常のケアとして自然に組み込まれています。今回の視察では、高齢者・子ども・障害者福祉の現場を通して、その実践と効果を実際に見て、感じる機会となりました。
ハプティックセラピーをテーマとした視察プログラム
昨年12月、私たちはストックホルムで、児童・高齢者・障害者福祉の現場におけるハプティックセラピー(タクティールマッサージ)の活用をテーマとした視察プログラムを実施しました。参加者にとって、日常のケアに触れ合いを取り入れる方法や、その効果を直に体感できる貴重な機会となりました。
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1日目 – 高齢者福祉におけるハプティックセラピー
初日は高齢者福祉に焦点を当て、まず認知症の方を対象としたデイサービスを訪問しました。1日約25名の利用者が通う施設で、2名のスタッフが定期的にハプティックマッサージを行っており、特に不安や落ち着きのない方に対して実施されていました。その効果は明らかで、利用者は心身ともに落ち着き、表情も穏やかになっていました。
スウェーデンでも日本でも、スタッフは時間に追われながら業務にあたっています。しかし、スタッフは工夫を重ね、短時間でも日常のケアの中に触れ合いを組み込むことで、利用者に安心感や幸福感を届けていました。毎朝8時から9時にその日の活動計画を立て、誰がマッサージを担当するか、誰がどの活動を担当するかを確認し合うことで、チーム全体の調和が保たれています。
スタッフは共通の目標と信頼関係の重要性を強調していました。誰も責任を避けず、各自の得意分野を活かして活動に取り組みます。料理やお菓子作りが好きなスタッフは積極的に担当し、歌や散歩が好きなスタッフも自分の強みを生かせるようになっていました。また、体調の優れないスタッフは朝のミーティングで共有し、仲間がサポートできるようにするなど、コミュニケーションの工夫も随所に見られました。
午後には高齢者施設を訪問し、フリーランスのマッサージ師が定期的にハプティックマッサージを提供していました。ここでも、利用者は落ち着き、消化機能や気分も改善し、日々の生活の質が向上していることがうかがえました。
両施設とも、スタッフは触れ合いの重要性を深く理解しており、ハプティックマッサージ以外でも、手をつなぐ、手足を保湿する、移動をサポートするなど、さまざまな形で日常のケアに取り入れていました。触れ合いは人間にとって生まれてから必要なものであり、高齢者が孤独になりやすい状況では特に欠かせないものだと強調されていました。
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2日目 – 児童福祉におけるハプティックセラピー
2日目はストックホルム郊外の幼稚園を訪れ、ハプティックセラピー教育の一環としてマッサージ絵本を活用する様子を見学しました。園児は約100名で、6つのクラスに分かれていました。
園には障害のある園児が3名おり、追加のスタッフが配置されていましたが、興味深いことに追加スタッフは障害のある子どもだけに対応するのではなく、園全体をサポートしていました。特別な支援が必要な子どもには、経験豊富な教師が重点的に対応していました。
プログラム参加者は、園内の温かく刺激的な学びの環境に特に感銘を受けました。スタッフは子どもたちに安心感と充実感を与えるために、細やかな工夫を重ねていました。
マッサージは絵本や歌を使ったマッサージ絵本の形で行われ、子どもたちは列に座り、互いの背中を決まった順序でマッサージします。重要なのは、相手に「マッサージしてよいか」を必ず確認すること。このプロセスを通して、子どもたちは同意と尊重の大切さを学びます。
教師によると、ハプティックセラピーの活用は、子どもたちが落ち着く時間を持てるだけでなく、園児同士の関係性を深め、トラブルや衝突の減少にもつながっているそうです。マッサージした相手を叩くことはほとんどないとのことでした。
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3日目 – 障害者福祉におけるハプティックセラピー
3日目は重度障害者向けの施設を訪問しました。ここでは約25名の利用者が、感覚刺激を中心とした日中活動に参加しており、ハプティック療法もその一環として提供されていました。
希望する利用者にはスタッフがマッサージを行い、全身マッサージは約1時間かけて行われます。専用の部屋で行われ、利用者は事前にスケジュールを組み込む形で参加していました。通常、4~5名が定期的にハプティックマッサージを受け、さらに3~4名は必要に応じて体験していました。
スタッフは、ハプティック療法がコミュニケーション能力や身体の可動性を向上させる効果があることを強調していました。例えば、手のマッサージを受けたことで、以前はペンを持てなかった利用者が持てるようになった例もあります。
施設内には、光や音、素材を用いた感覚刺激のための5つのスヌーズレンルームがあり、ボールプール、スピーカー内蔵のウォーターベッド、バブルバスのある部屋など、多様な工夫が見られました。
参加者のご感想:
スウェーデンの施設を色々と見学させて頂き、日本の施設や仕組みとの違い、日本でもできることを学ばせて頂いて、とてもいい経験になりました。また、施設の方々がとても温かく受け入れ、私たちの質問にも親切に答えて下さり、人の温かさも実感できました。


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総括
今回の視察を通じて、スウェーデンにおけるハプティックの実践を間近で体験することができました。年齢や障害の有無に関わらず、触れ合い、尊重、コミュニケーション、個別対応の重要性が一貫して示されていました。
また、スウェーデンでも日本でも、スタッフは時間に追われる中で働いています。しかし、日常のケアの中で短時間でも触れ合いを取り入れることは可能であり、その効果はどちらの国でも同様に現れることが確認されました。
ハプティックセラピーは、コストが比較的低く、効果的で、福祉現場におけるウェルビーイング向上に大きく寄与する方法であると感じました。今後も、両国間での知見共有や連携を通じて、よりよい福祉の実践が広がっていくことが期待されます。
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