言葉よりも深く伝わる、“触れること”の力 ― スウェーデンの教育と福祉に見るハプティックセラピーの可能性 ―



ハプティックセラピーは、“触れること(ハプティック)”を通じて心身のつながりを支えるアプローチです。もともとはスウェーデンで発展したタクティールマッサージ(手で優しく触れるケア)に基づいており、教育や福祉の現場などで活用されています。触れることで、道具や薬を使わずに安心感や信頼を生み出し、ケアの質を高める一助となっています。
🌍 教育現場での“触れる学び”:「宇宙マッサージ」
スウェーデン教育放送の教材のひとつに、タクティールマッサージを取り入れた「宇宙マッサージ」があります。映像の中では、先生のお話しに合わせて子どもたちが互いの背中や腕にやさしく触れ、物語のように“宇宙旅行”をイメージしながら、穏やかな音楽に合わせてマッサージを行います。
マッサージを通して、子ども同士が安心感や共感を育み、クラス全体が落ち着いた雰囲気になることを目的としています。言葉を使わないコミュニケーションとしての触れ合いは、幼児教育における情緒の安定や信頼関係づくりに役立つと考えられています。
🧠 科学が示す“触覚のちから”:ヨーテボリ大学の研究より
2024年、ヨーテボリ大学では、ADHDを持つ15〜17歳の若者14名を対象に10週間・週1回のタクティールマッサージを実施しました。
その結果――
- 多動性、衝動性、注意欠陥の明確な軽減
- イライラや反抗的な傾向の減少
- 睡眠の質の向上
さらに、3か月後の追跡調査でも一部の効果が持続していました。
研究代表者は次のように述べています:
「タクティールマッサージは、安全で効果が期待できる補完的治療法として、医療現場でも、導入できる可能性があります。」
この研究は、「道具も薬も使わずにケアの質を高める」というケアのあり方に新たな示唆を与えています。
🤝 “触れること”から広がるケアの未来
触れるという行為は、もっとも原始的で、もっとも人間らしいコミュニケーションです。言葉では届かない安心やつながりを生み出し、子ども、高齢者、障がいのある方、そしてケアを担う人、すべての人の心をやわらかくつなぎます。テクノロジーが進む時代だからこそ、“触れること”が持つ本質的な力に、もう一度目を向けてみてもよいのかもしれませんね。
✨ ハプティックセラピーをめぐる体験と学び
こうした“触覚”を通した支援や教育に関心のある方に向けて、SQCでは現地スウェーデンで「ハプティックセラピープログラム」をノーベル晩餐会の直前、12月1日~3日に開催いたします。
このプログラムでは、実際にハプティックセラピーがどのように教育・福祉の現場で取り入れられているかを、施設訪問や対話を通して理解を深める機会があります。
また、事前オンラインセミナーも予定されており、触覚ケアの背景やスウェーデンの実践について知ることができます。
応募締め切りは2025年10月20日(月)
詳細・お申込みはこちら
触れることの力やハプティックセラピーの実践に関心のある方は、メールマガジンでも関連情報や解説をお届けしています。
無料メールマガジン登録はこちら
参照元
https://www.gu.se/en/news/tactile-massage-helped-young-people-with-adhd?utm_source=chatgpt.com


SQC newsletter
スウェーデンの最新の福祉情報を
スウェーデンの最新の福祉情報をお求めですか?
お求めですか?
SQCの今後のイベント情報や、日本ではあまり知られていないスウェーデンの社会的な課題に 対する事例など、スタッフが選りすぐったニュースをお届けいたします。
recommended posts