子どもの権利を都市空間に反映するスウェーデンの社会的サステナブルデザイン



子どもの権利が“空間”になるとき
建築が社会的サステナビリティと民主主義教育を実現する
2020年、スウェーデンは「国連子どもの権利条約」を国内法に組み込みました。これにより、子どもは単に保護される対象ではなく、社会の意見を持つ存在として扱われることが明確になりました。この考え方は福祉や教育にとどまらず、都市計画にも大きな影響を与えています。
「居場所がない」から生まれた空間

ストックホルム南部ブレデング地区の Trissanshjärta(トリッサンの心) は、こうした考え方の象徴的事例です。このエリアは以前、広いサッカーグラウンドに囲まれ、主に男の子や大人の男性がスポーツで使っていました。そのため地域の10代の女の子たちは「自分たちの場所ではない」と感じていました。
そこで行われたのが、女の子たちとのワークショップです。彼女たちの感覚的なニーズを出発点に、ダンスや自由な身体活動ができる公園、また世代を超えて集える社交的な空間として設計されました。公園の面積はサッカーコート1面分ほど。都市の中で再現可能なスケールで、多くの地域で応用できるモデルです。

屋根付きシェルターは雨よけだけでなく、ベンチやステージとして利用可能で、照明やBluetoothスピーカーが組み込まれており利用者自身が音楽を流せるようになっています。
つまりここは、「遊具」ではなく自分たちの時間と表現を持てる空間として設計されています。
また、航空写真で見ると、公園は地域施設の中心に位置し、主要な通路沿いにあります。若者、とくに女の子を社会の中心に置くという強いメッセージを空間で表現しています。
子ども参加型プロセスの難しさ
子どもや若者を実際に都市計画に参加させるのは、なかなか難しいものです。意見を聞くだけでは、どこまで反映されるのか見えにくく、質問もつい誘導的になってしまいがちです。その結果、「参加型」と言っていても、実際には意見を聴く程度にとどまってしまうことが多いのです。そこで、興味深い参加のプロセスを取ったプロジェクトがあります。
北スウェーデン・ウーメオの Frizon プロジェクト
北スウェーデンの Frizon – en jämställd mötesplats(誰もが平等に集える場所)プロジェクトでは、地域の若い女の子たちが参加しました。
彼女たちは、ジェンダーロールや女性として期待されることに制約を感じることがありました。ワークショップでは、「安全で、期待される役割から解放された自由な居場所」をつくる方法について議論し、自分たちの希望や不安、居心地の悪さから解放された空間のイメージを作りました。
そのプロセスは次の通りです。
① 作品を鑑賞し、テーマについて考える
安全・参加・影響力に関する作品を鑑賞し、少人数や大人数のグループで感想を話し合います。

② 共有空間で体験する
規則やルールを意識しながら、空間での行動を試します。状況や空間に対する優先権がある、なしを体験し、言葉を使わずにコミュニケーションする方法も試します。

③ 振り返りと重要ポイントの整理
参加者は、プロジェクトの過程で何が最も重要だったかを振り返ります。平等な地位を得るために何が必要かを考え、スタンプ(ハンコ)に表します。

④ 成果の展示
参加者のスタンプや意見は、公園内で展示され、誰もがその考えを見ることができます。

参加型プロセスと民主主義教育
Trissans hjärta や Frizon の参加型プロセスは、単に空間を作るだけでなく、子どもたちが地域社会の一員として民主的な市民になるスキルを身につける機会でもあります。都市計画や開発における子どもや若者の参加は、民主主義の基本原則に根ざした基本的な権利です。ワークショップを通じて自分たちの意見が空間に反映される経験は、民主的プロセスの理解を深める学びとなり、子どもや若者が社会の一員として自らの意思を持つ力を育みます。
小さい頃から、将来の選挙で誰に投票するかのように、特定の公園や物理的環境の開発に参加できることを学べば、子どもたちは自分たちの意見を持つことが自然だと理解することに繋がります。
このように都市設計は、環境や素材だけでなく、人々の関係性や参加の機会をデザインすることが、真のサステナブルな街づくりにつながるのではないでしょうか。
参照元:
https://nivaland.se/en/niva_projekt/bredang-spontanidrott/
Frizon – en jämställd mötesplats
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学校は民主主義者を育てるための唯一の共通の教育機関

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