スウェーデンの障がい者に対する最大の自由改革
スウェーデンは、障がい者の制度化と差別の長い歴史があります。しかし、1960年代には、障がい者の権利運動が勢いを増し、社会の現状を問い直しました。障がい者たちは、自己決定権や、他の市民と同じ条件での生活権について話し始めました。そして、研究者や影響力のある政治家と協力して、障がい者のケアに多くの改善をもたらしました。特に大きな転機は、1994年にLSS法が導入されたことです。
LSS - Lagen om stöd och service för vissafunktionshindrade
特定の機能的障がい者に対する援助及びサービスに関する法律
LSS法は、深刻で持続的な障がいを持つ人々に対して、必要な支援を受けられる良好な生活環境や、障がい者本人が支援のあり方を決定ができる権利を保障する法律です。この法律の目標は、障がい者各個人が他の人々と同じように生活できるようにすることです。
この法律により、障がい者向けの大規模な施設が閉鎖されました。そして、障がい者は小規模なグループホームや、特別な支援のある通常のアパートに住む権利を得ました。これは障がい者本人が、希望とする生活を送るための社会の支援を決定することを意図しています。
LSS法は、以下の3つの異なるグループに属する人を対象としています。
1. 知的障がい者や自閉症の人
2. 高次脳機能障がい者
3. 重度の身体・精神障がい者
2022年のLSS法の対象者数は、合計で77,500人です。このうち、90%は知的障がい者や自閉症の人々となっています。残りの2つのグループは、それぞれ高次脳機能障がい者が3%、重度の身体・精神障がい者が7%です。
LSS法は10種類の支援を提供しています。主な支援には、グループホーム、デイアクティビティーセンター、パーソナル・アシスタンスなどが含まれます。1994年の法律が導入されて以来、これらのサービスを受ける人数は着実に増加しています。
グループホーム
グループホームは、他の市民と同じ水準の個別に適応した住環境を提供することを目的としています。住居は一般の住居系地域に統合されており、通常、各グループホームには5つの個人の部屋と、共用のリビングルームとキッチンがあります。個人の部屋には、キッチン、リビングルーム、寝室、トイレ/シャワールームが備わっており、1つのアパートメント住居のようになっています。家具、カーテン、ランプなどは、各住人が自分で選びます。障がい者も、他の人と同じように自分の部屋の内装を選択する権利があるのです。
グループホームは、対象グループごとに構成されます。例えば、軽度、中程度、重度の知的障がいや、重度の自閉症の人々といったグループ分けです。それらの対象グループに合わせて、適切な能力を持った介護職員が配置されています。
デイアクティビティーセンター
他の市民と同様、障がい者も、自分が社会に影響を与えることのできる、生きがいのある日常を必要としています。そこで、障がいのために通常の仕事ができない場合、LSS法はデイアクティビティーセンターでの支援を提供しています。障がい者が選択できるデイアクティビティーセンターの種類は非常に多岐にわたります。例えば、ランチを提供するレストランや、一般の職場と似た作業を行う施設などです。また、重症心身障がいを持つ人々を対象とした、感覚刺激に焦点を当てたプログラムもあり、個々人ができるだけ自立した日常生活を送ることを目指しています。
パーソナル・アシスタンス
パーソナル・アシスタンスは、おそらくスウェーデンの障がい者にとって最も革新的なLSS法の支援です。これまでのように医療スタッフの勤務時間やあらかじめ決められたプログラム内容に合わせる必要がなく、パーソナル・アシスタンスを受ける障がい者は、活動の内容、それを行う時間や場所を、完全に自分で決めることができます。つまりパーソナル・アシスタントは、障がい者のそばに付いて、他の人と同じように生活する自由を提供します。例えば、陽が射す時には、散歩に出かけて温かさを楽しむことができます。また急にお寿司を食べたくなった時には、アシスタントと一緒に日本食レストランに行くことができるでしょう。パーソナルアシスタンスの対象者は、成人の場合、普段は自身のアパートに住む人々であり、支援の提供時間は個々のニーズに応じて決められます。また、両親と一緒に暮らしている子供たちもパーソナルアシスタンスを受けることができます。非常に高い支援ニーズを持つ人々は、24時間体制で1〜2人のアシスタントをつけることができます。
スウェーデンでLSS法が導入されてから30年が経ち、法律の適用対象となる人々の生活の質は著しく向上しました。しかし、障がい者運動に関わる人々は、障がい者の支援にはまだ大きな欠点があると考えています。そこで彼らは、LSS法の本来の意図に従って法律が運用されるよう、強く求めています。
障がい者運動の参加者たちが特に指摘する問題は、高いニーズを持つ人々に、法律で定められた支援が与えられていないことです。例えば、十分な数のグループホームが整備されていないため、適切なグループホームを見つけるのに数年待たなければならないことがあります。また、パーソナルアシスタンスの対象者要件もますます厳しくなっています。
LSS法が提供する10種類の支援
1. 相談と個別サポート:カウンセラーや心理学者、栄養士、作業療法士などから、サポートやアドバイスを受けます。
2. パーソナルアシスタンス:衛生、食事、衣服の着脱、他人とのコミュニケーションなどの基本的ニーズに対して支援が必要な場合に受けられる、個人的な生活支援。
3. ガイドヘルプサービス(外出時の付き添い):友人を訪問したり、余暇活動や文化的活動に参加したりする際に利用できる付き添いサービス。
4. コンタクトパーソン:連絡を取り合ったり、自由な時間に一緒に何かをしたりできる友人のような存在。他の人に会う、映画館に行くなど、本人がしたいことを実現できます。
5. 自宅でのレスパイト(休息)サービス:障がいのある子どもや大人の世話を、一時的に別の人が代行すること。それにより、両親などの介護者は、自分の時間を持ったり、家の外で何かをしたりすることができます。
6. ショートステイ:月に数日から1週間程度、自宅を離れて生活すること。例えば、短期のホームステイやサマーキャンプなどがあり、気分転換やリラックス、自己啓発の機会になります。
7. 12歳以上の子どもの延長学童保育:12歳以上で学校に通っている障がい児が、登校前後や休暇中などに、自宅以外の場所で過ごすことができるサービス。
8. 児童及び青少年のためのファミリホームあるいは特別サービス付き住宅:支援ニーズが非常に高く、様々な支援を受けても両親と暮らすことが出来ない場合に適用されるサービス。24時間体制で支援を受けながら、ファミリホーム(里親)や特別サービス付き住宅で暮らすことができます。
9. 成人向けの特別サービス付き住宅およびその他の特別仕様の住宅:グループホームをはじめとする成人向けの特別な住宅のこと。例えばグループホームでは、24時間スタッフは駐在するものの、できるだけ本人が自立できるよう、キッチンやリビングルームなどを備えた個人の部屋と、他の住民との共有スペースが存在します。
10. デイアクティビティ:就労年齢に達しているが、障がいのために就労や就学をしていない場合に、デイアクティビティーセンターや職場で実習などができます。その内容は、本人の希望やニーズに合わせて決定します。
出典:1177 「Lagen om stöd och service till vissa funktionshindrade – LSS」
SQC newsletter
スウェーデンの最新の福祉情報を
スウェーデンの最新の福祉情報をお求めですか?
お求めですか?
SQCの今後のイベント情報や、日本ではあまり知られていないスウェーデンの社会的な課題に 対する事例など、スタッフが選りすぐったニュースをお届けいたします。
recommended posts