スウェーデンの特別支援高校を訪問



近年、私は日本からの視察団とともに、ストックホルム北部にある特別支援高等部を何度か訪問する機会がありました。その中でも特に印象的だったアーランダ特別高等学校での経験を紹介します。
こうした訪問では、毎回生徒や先生方と交流できることが大きな喜びです。直近の訪問では、日本の大学生の大きなグループを伴っていました。スウェーデンの生徒たちはこの訪問に向けて特別な準備をしており、誇りを持って自分たちの学校を紹介してくれました。さらに、生徒たちは学習の一環として贈り物も用意していました。ホテル・レストランプログラムの生徒は、スウェーデンの伝統である「7種類のクッキー」を焼き、商業プログラムの生徒はそれらを袋に詰め、日本語で説明文を添えて来訪者に渡しました。贈り物が手渡された瞬間は非常に感動的で、忘れられない時間となりました。
アーランダ特別支援高等学校では、いくつかの職業準備プログラムが提供されています。具体的には、商業プログラム、ホテル・レストランプログラム、そして自動車・物流プログラムがあります。

自動車プログラムの訪問は特に興味深いものでした。ここには車の整備に必要な設備がすべて揃っており、生徒たちは一般の人々にサービスを提供しています。例えば、洗車や季節ごとのタイヤ交換などです。ここでは技術だけでなく社会的なスキル(対人関係やプロ意識)を磨く場として、地域住民にサービスを提供しています。また、得られた収益は学期末の活動に使われ、遊園地への遠足などが人気です。これにより労働の対価を得ることで生活を豊かにするという労働の喜びを学ぶことにも繋がります。
商業プログラムの生徒は校内に小さな店舗を運営しており、バレンタインデーやハロウィン、クリスマスなどの行事に合わせて年に数回開店します。ここではホテル・レストランプログラムの生徒が作ったお菓子などを販売しています。
職業準備プログラムには合計26週間の実習が含まれています。商業プログラムの生徒はスーパーマーケットなどで、ホテル・レストランプログラムの生徒はレストランやホテル、会議施設などで実習を行います。
訪問を通じて、多くの前向きで明るい生徒たちに出会えたことは非常に刺激的でした。校長によれば、多くの企業や公共機関は実習生の受け入れに積極的ですが、卒業後に仕事を見つけるのは依然として難しい状況です。校長は、企業や公共機関がもっと責任を持って若者に機会を提供すべきだと考えています。
アーランダ特別支援高等部(Arlanda Anpassade Gymnasieskola)

スウェーデンのシグチューナ市マルシュタにあるアーランダ特別支援高等学校は、知的がい害を持つ若者のための教育機関であり、アーランダ高校(Arlandagymnasiet)の一部として運営されています。現在、約60名の生徒が在籍しています。
教育課程は4年間で、無料かつ任意で進学できます。プログラムには2種類あります。
•全国共通の職業プログラム:社会で働くための準備を目的とし、例として「自動車整備と物流」「商業とサービス」「ホテル・レストラン・ベーカリー」などがあります。
•個別プログラム:生徒一人ひとりのニーズに合わせて柔軟に設計され、生活力や自立を育むことを目的としています。
授業は少人数制で行われ、特別支援教育の専門知識を持つ教師やスタッフが手厚くサポートします。教育は個人の能力に合わせて調整され、安心して学べる環境が整えられています。
さらに重要な特徴として、特別支援学校では放課後活動(fritids)が高等部まで提供されます。通常の学校では小学校6年生までしか利用できませんが、特別支援学校では高校段階まで継続して利用できるため、生徒は学習だけでなく社会的活動や余暇の面でも支援を受けられます。
アーランダ特別支援高等学校は、アーランダ高校と同じ校舎にあり、食堂やカフェテリアなどの共用スペースを利用します。そのため、両校の生徒が自然に交流し、互いに理解と尊重を深めることができます。
アーランダ高校(Arlandagymnasiet)
アーランダ高校はマルシュタにある大規模な普通高校で、約1,100名の生徒と120名の職員が在籍しています。学校は国連認定校であり、民主主義や人権など国際的な価値を重視した教育を行っています。
まとめ
アーランダ特別支援高等部は、知的障がいを持つ若者に対して包括的で個別化された教育を提供し、社会参加への基盤を築く場です。放課後活動を高校段階まで提供する点や、通常の高校との自然な交流環境は、スウェーデンの教育における「インクルージョン(包摂)」の理念を体現しています。
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