スウェーデンのLSS障害者支援はどう変化した?2025年最新レポート解説



今年はスウェーデンを訪れる多くのグループが、障害者福祉や特にLSS法による支援に関心を持っていました。また、私のブログでLSS法について紹介した記事が、最も多く読まれている投稿であることも注目すべき点です。まだ読まれていない方は、こちらから
スウェーデンの社会福祉庁は毎年、LSS法による障害者支援の現状を調査しています。主にサービスの不足や改善が必要な分野に焦点を当てています。
以下に、2025年版の報告書を簡単にまとめました。関心のある方には参考になる内容だと思います。
スウェーデン保健福祉庁(Socialstyrelsen)の最新報告によると、LSS(特定障害者支援法)に基づく支援の減少傾向は止まりました。2022年から2023年にかけて、LSS支援を受けている人は 人口10,000人あたり74人から75人 に増加しました。ただし、これは一時的な増加か、長期的な傾向の変化かはまだ判断できません。
この増加はほぼ デイアクティビティセンター によるもので、日中活動を通じて就労が困難な人々に意義ある活動の機会を提供しています。一方で、賃金補助付き就労の人数は減少しており、デイアクティビティセンターへの移行が一因と考えられます。また、自閉症スペクトラム障害の診断を受ける人が増えていることも、ニーズ増加の背景の一つです。
就労可能な人にとっては、デイアクティビティセンターだけに留まることが就労へのステップを阻む場合もあります。そのため、スウェーデン保健福祉庁は、より多くの人が一般の労働市場での就労機会を得られるよう、関係機関との連携を強化しています。
その他のLSS支援はおおむね安定していますが、コンタクトパーソンや付き添いサービスなど孤立防止に重要な支援は引き続き減少しています。また、障害を持つ子どもや若年層への支援も減少傾向にあります。
自治体の障害者支援にかかる総費用は、2023年に約 887億クローナ(約1.17兆円 2023年平均レート)に上りました。過去数年に比べて支出の増加は鈍化していますが、成人向け居住支援の費用は増え続けています。この費用はスウェーデンの国内総生産(GDP)の約 1.5% に相当します。
LSS支援を受ける多くの人はサービスに満足していますが、全員ではありません。特に成人向け居住施設の利用者は満足度が高い傾向にありますが、一部の利用者は日常生活の重要な部分を自分で決められないと感じています。
スタッフの能力も支援の質に影響します。大多数のスタッフは看護・介護系の教育を受けていますが、差があります。特にデイアクティビティセンターでは 12%の施設で、常勤スタッフ全員が高等学校レベルの基礎教育を受けていません。一方で、自治体による継続教育や、明確化教育・低刺激対応・代替コミュニケーション(AKK)の研修提供は増加しています。
医療・保健サービスに関しては改善点と課題が混在しています。認知症や肥満治療へのアクセスは比較的良好ですが、心筋梗塞時のPCI治療は障害者で受けにくい状況です。さらに、ポリファーマシー(多剤併用)は一般的で、LSS利用者の40歳以上の10~34%が10種類以上の薬を使用しています。抗精神病薬は精神疾患以外の行動症状にも処方されることがあります。
口腔健康も不平等です。LSS利用者は一般人口より歯科受診が多いものの、年齢とともに受診率は減少します。既存の補助制度は手続きが複雑で、十分に活用されていません。
危機対応能力(危機管理体制)は依然として不十分です。LSS施設における避難計画を持つ自治体は30~40%、継続計画を持つ自治体は20%に留まっています。これにより、緊急時における利用者の安全確保が課題となっています。
スウェーデン保健福祉庁は、自治体が多くのニーズに応えているものの、依然として適切な支援が受けられない人が存在すると指摘しています。支援不足は社会参加や生活の質を低下させるリスクがあります。
統計:2024年
LSSによる少なくとも1つの支援を受けている人数:81,000人(2010年から30%増加)
デイアクティビティセンター:44,297人
グループホーム:30,389人
パーソナルアシスタンス:17,900人
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出典:Socialstyrelsen Insatseroch stöd till personer med funktionsnedsättning – Lägesrapport 2025 -Socialstyrelsen

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