イノベーション=ITではない 。スウェーデンのイノベーション力のカギは「人と仕組み」



「イノベーション」と聞くと、AI、DX、アプリ開発、システム導入 といったIT技術をまず思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。もちろん、デジタル技術は重要です。
しかし、スウェーデンのイノベーションの強さは、ITそのものだけではありません。
その本質は、人への投資と、それを活かす制度・仕組みにあります。今回は、2025年版グローバル・イノベーション・指数(GII)の結果から、スウェーデンのイノベーションの強みをご紹介します。
スウェーデンは2025年GIIで世界第2位
スウェーデンは、世界知的所有権機関(WIPO)が発表した2025年版グローバル・イノベーション・指数(GII)において、第2位にランクインしました。これは3年連続での快挙です。
GIIは、単なる技術力ではなく、
- 人材
- 制度
- 経済構造
- 成果の社会実装
まで含めて総合的に評価する指標です。つまり、この順位は「イノベーションが社会の中でどれだけ機能しているか」を示しています。
■ GIIが示すスウェーデンの強み(主要指標)
1. 人材への圧倒的な投資
研究者数(人口100万人あたり)世界1位
人口当たりの研究者数が世界で最も多いという事実は、スウェーデンが技術を生み出す「人」そのものに継続的に投資していることを意味します。
2. 研究開発への高いコミットメント
研究開発費(GDP比)世界3位:3.6%
GDPの3.6%を研究開発に充てている点からも、短期的な成果よりも、将来の技術基盤を育てる長期視点が重視されていることが分かります。
3. 知識集約型雇用の厚み
知識集約型雇用 世界3位
これは、高度な知識やスキルを必要とする職種が、経済の中核を担っていることを示します。単なる製造や効率化ではなく、技術を使って新しい体験やサービス価値を生み出す力が社会全体に根付いている証拠です。
4. 世界的ブランド価値の高さ
グローバルブランド価値 世界2位(GDP比)
これは、スウェーデンが「技術的に優れている」だけでなく、国際市場で評価される形にまで価値を転換できていることを示しています。
■「ビジネスの高度化」が示す構造的な強さ
GIIの大分類で、スウェーデンは「Business sophistication(ビジネスの高度化)」で世界第2位を獲得しています。
知識の吸収力が高い国
- 知的財産権の支払い(世界5位)
海外の特許や技術を積極的に活用し、イノベーションに取り込んでいる - ICTサービス輸入(世界5位)
国内に固執せず、必要な技術やサービスを柔軟に外部から導入
これらは、スウェーデンが自国完結型ではなく、オープンで実践的なイノベーション戦略を取っていることを示しています。
日本とスウェーデン:Innovation Linkages(イノベーション連携)の違い
「Innovation Linkages(イノベーション連携)」の分野では、
- 日本:世界6位
- スウェーデン:世界8位
と、どちらも高評価です。しかし、強みと課題は対照的です。
- 日本:
- 論文数や特許など、個別の技術アウトプットは非常に強い
- 一方で、産学官連携の実効性やエコシステムの成熟度に課題
- スウェーデン:
- 産学官・地域クラスターを含む連携の仕組みが整備されている
- 個別の特許・論文数では日本に一歩譲る
両国ともイノベーション連携の分野で高い評価を受けており、その強みの現れ方に違いがある点が興味深いところです。
■技術開発と活用の両立が生むイノベーション
GIIの評価から見えてくるのは、スウェーデンが
- 技術開発そのものへの投資(インプット)
- 技術を活用した知識集約型サービスへの展開(アウトプット)
この両方を世界トップレベルで実現しているという点です。つまり、スウェーデンは無形資産を生み出し、それを市場価値へと変換する能力が極めて高い国だと言えます。
■失敗を恐れない文化を支える「心理的安全性」
この背景の1つに、スウェーデン特有の制度があります。
社会保障が挑戦を後押しする
手厚い失業保険や再就職支援、リスキリング制度は、
- 起業
- キャリアチェンジ
- 新分野への挑戦
に伴うリスクを大きく軽減します。「失敗しても、また立ち上がれる」という社会的な信頼感が、大胆な挑戦を可能にする心理的安全性を生んでいます。
生涯学習(リカレント教育)がキャリアを支える
スウェーデンでは、学び直しやスキルアップの文化が社会に根付いています。こうした生涯学習の制度の中心となるのが、成人教育機関「Komvux(コムブクス)」です。
- 全国すべての自治体に設置
- 小中学校〜高校相当の教育を無償提供
- フルタイム就学時には生活費給付もあり
このように経済的なサポートを受けながら学び直せる制度が整っています。
実例:エンジニアの再出発
私の知人で、大手テクノロジー企業に30年勤めた外国人エンジニアがリストラされたケースがあります。
彼は、
- 失業保険を受給しながらスウェーデン語を専門学校で学び
- 大学でAI・機械学習を学び直し
- 再就職支援プログラムのメンター制度を活用して再就職
を果たしました。これは特別な成功例ではなく、制度として用意されている選択肢です。
■結論:スウェーデンのイノベーションの本質
スウェーデンのイノベーションの強みは、
- 人材を大切にする長期的な投資
- 失敗を許容するセーフティネット
- 産学官・国内外をつなぐ柔軟なエコシステム
これらがバランスよく機能している点にあります。スウェーデンのイノベーション力を支えているのは、IT技術そのものだけではなく、人が挑戦し続けられる制度と文化の総合力を社会全体で実装してるからと言えるのではないでしょうか。
参考:グローバル・イノベーション・指数(GII)2025ランキング
1.スイス
2.スウェーデン
3.米国
4.韓国
5.シンガポール
6.英国
7.フィンランド
8.オランダ
9.デンマーク
10. 中国
参考:
スウェーデンの革新力は教育にも支えられています。そのひとつが、クリティカルシンキングです。(過去のブログへ→)
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